退任のご挨拶  入澤寿平

 2022年3月末日をもちまして、研究活動のメインの場が岐阜大学に移ることになりました。健友会にて退任教員のご挨拶をする際には「名古屋大学を退職いたしました。」と記述するのが通例ではございますが、皆様ご存知の通り、岐阜大学との経営統合により東海国立大学機構が誕生し、小職は退職ではなく「内部異動」扱いで転籍致しましたので、面倒な書き方をさせていただきました。しかしながら、健友会からは退任となりますので、旧化工教室の皆様、健友会の皆様にこれまでの感謝の意をお伝えさせて頂きたく存じます。大変お世話になりましたこと、心から感謝し御礼申し上げます。 

 

 私が名古屋大学の分子化学工学分野、材料システム工学研究室(田邊靖博研究室)の助教に着任したのが、2014年4月でございますので、8年間名古屋大学にお世話になったことになります。長いようでもありながら、大変環境にも恵まれた8年でした。先生方との交流、活発かつ先鋭な学生さんと一緒に過ごした大学ライフと研究活動ともにとても充実した期間を過ごすことができ、思い返しますと光の如くあっという間に過ぎた生活でございました。旧化工教室の観点から思い返しますと、元々、私は高分子、繊維、炭素材料、複合材料など「材料」を専門にしており、化学工学の学問を全く知らずに赴任して参りました。最初は担当している学生実験ですら戸惑いの毎日でございましたが、そうした中でも、旧化工教室の皆様からとても暖かに接して頂き、種々同僚の先生方からご助言と同時にサポートを賜ることで、不安であった大学教員としての仕事も乗り切ることもでき、同時に学科の雰囲気にすぐに慣れることができました。また、8年の間で異分野であった化学工学で活躍される先生方と接する機会を頂けたことによって、新しい知見や知識を吸収することもでき、改めて「材料」を深く考えさせられることも多々の場面でございました。特にSDGsへの意識の高まりの中で、ライフサイクルアセスメント的思考を真剣に考えるようになれたのは、この教室に在籍できた成果の一つと考えております。

 

 研究面では、田邊先生から若いうちに研究は何でも自由に活発に研究室をリードして良いとのお言葉とバックアップを頂き、本当に伸び伸びとテーマを実施させて頂きました。同講座には少しだけ先輩でありながら同世代の山本徹也准教授も在籍しており、研究のスピード感など刺激も受けながら大変勉強をさせて頂きました。元々全くの異分野での研究フィールドでございましたが、共著の論文も出せたのは田邊先生、山本先生のご高配のおかげと存じております。小職の至らぬ点が多く多大なるご迷惑をかけながらの研究室生活となりましたが、この場を借りましてお詫びと、改めて良い環境を作って頂きましたことに感謝申し上げます。

 

 また、愛知県という環境は、近くに錚々たる企業が多数研究開発拠点、本社を構えていることはこの場で申すまでもないことでございますが、諸先輩方が築き上げて頂いた名古屋大学との長い歴史と強い結束力によって、共同研究体制にとても長けている大学であったと思い返しております。名古屋大学という傘に守られながら小職もだいぶ企業様に研究面では助けて頂きました。この点に関しまして、企業様にただ感謝するばかりでなく、旧化工教室そして健友会という同窓会が長い歴史の中で得てきた信頼というものがあったからだとも存じております。そうした恵まれた環境に在籍させていただけたことにも感謝しております。

 

 さて、先にも述べましたとおり、現在小職の活動のメインの場は岐阜大学になりました。自然に恵まれた環境で穏やかな空気が流れており、のんびりやの自分にとっては腰を据えて研究するのに良い環境だと感じております。また、幸にして、期間はまだわかりませんが、現在、名古屋大学も兼務の形で籍を残していただいており、名古屋大学の活気溢れた空気にも未だ触れられる大変恵まれた状況を頂いております。名古屋大学と岐阜大学が経営統合して数年が経過しておりますが、経営統合後の人事交流はまだ数が少ないと聞いております。そうした中で、名古屋大学と岐阜大学の両大学を知る教員として、異動後も旧化工教室の先生方とは、疎遠にならぬよう交流を続け、今後は少しでも東海国立大学機構としての連携に何か一役買えないかと考える今日この頃です。

 

 最後になりますが、皆様のご健康、ご健勝ご多幸を祈念いたしますと同時に、旧化工教室の関係者皆様、また、マテリアル工学科の皆様の益々の発展もお祈り申し上げます。

また、今後もご高配を賜りますようお願い申し上げます。