共晶会の現況とこれからへの想い  共晶会第47代会長 原 邦彦

 健友会の皆さま 

 

ご健勝にてご活躍の御事と拝察申し上げます。

 

共晶会会長として一言ご挨拶を申し上げます。

 

ご存知の方もおられるかと思いますが、共晶会の歴史は古く、昭和16年(1941年)、当時の金属学科学生クラス会「共晶」がそのルーツとなっています。その後、若干の曲折を経て、昭和33年(1958年)金属学科同窓会「共晶」が発足し、第1回総会が聞かれました。昭和39年(1964年)、機関誌「共晶」創刊号を発行、平成29年(2017年)第32号まで発行されています。平成24年(2012年)には、共晶会創立70周年を迎え、記念式典と記念祝賀会が開催されました。

 

平成29年(2017年)1221日現在、会員数4,645人(所属内訳:大学 510名、企業 約2800名、官公庁 約120名、その他 1,200名)となっています。主な活動として、年1回の総会(幹事会は年6回)に加え、関東支部・関西支部の総会、産業界と在校生との交流会(OB交流会)、さらに、名古屋大学材料バックキャストテクノロジー研究センターとの共催の学術シンポジウムをそれぞれ毎年1回開催しています。本年6月には、故八田泰郎氏の遺志及び八田當子氏のご厚意による寄附金を基に、研究活動への助成及び学生の博士課程進学等への奨励活動等を目的とする八田基金を創設し、その運用を開始いたしました。また、名古屋大学組織改変にともない、新たにマテリアル工学科が編成されたことから、新学科の卒業生が生まれるまでに、健友会と共晶会の好ましい統合の姿を具体化させることが必要となり、目下、統合の時期や組織、活動内容等を議論するための統合準備委員会が両同窓会の担当幹事で組織され、一緒に議論をさせていただいているところです。

 

さて、皆様ご承知の通り、今、深層学習によって処理能力を日々進化させている人工知能が驚くべき速さで、学術研究、教育、医学・医療、創薬、材料開発、認知・情報処理、生産技術、政治・文化・芸術、社会システムなど、分野を問わず実に多方面に活用され、社会に影響を及ぼし始めています。また、わずか10年ほど前には、向こう1億年先まで実現は難しいとされていた量子コンピュータが、早ければ23年の間に小規模ではあるが実現される見込みが出てくるなど、今、先端科学技術が急速にその進化の速度を速めてきています。いたずらに情報に流される必要はありませんが、このような科学技術の変化に無関心であってはならないでしょう。材料および材料プロセッシングの分野にも、否応なしにこの影響が顕在化してくるものと思います。 また、残念なことではありますが、日本のお家芸として高く評価されてきたモノづくり技術の世界で、名だたる企業での製品データの改竄や、あるいは日本を代表するアカデミア界での論文捏造事件など、日本が長い歳月をかけて築いてきた「国の高い信頼性」を根底から崩す事件が頻発してきています。在校生、OBを含め、産学官が連携して、今一度冷静になって、信頼性の高い日本を再構築する努力をすることが必要であり、そのためにフィジカル社会の根幹を支える材料系学科同窓会が果たし得る役割を追求したいと思っています。

 

平家物語の始まりの有名な一文を添えて結びとします。「祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、 盛者必衰の理をあらはす。奢れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き者もつひにはほろびぬ、ひとへに風 の前の塵に同じ。後略 」