学部2年生向け講義『プロセス基礎セミナ』   運営委員長 山本徹也

 

 プロセス基礎セミナーは,分子化学工学コースに配属された学部2年生が45人のグループを組み,化学工学に関する課題に対してその解決法を模索し,その具現化に向け装置を設計・開発・改良するという学生達のアイディアと創意工夫がダイレクトに反映する開講科目です。講義では展示会スタイルの中間発表,競技会を開催し,各グループで開発した装置の性能を競うとともに,ディスカッション・プレゼンテーションを通じてその構想,研究成果を発表します。また,各業界にて第一線でご活躍されている数名の同窓生に招聘教員として審査の協力および講評をお願いしており,現場の声を直接聞くことができることも大きな特徴であると言えます。

 平成2526年度は「分離装置を作ろう -比重,大きさ,形,材質等の異なる混合物からの分離-」をテーマに設定し開講しておりました。今年度は過去に取り扱った課題の中から厳選し「粉体輸送装置の開発」をテーマに設定しました。多くの製品の原材料となる粉体の輸送はプラントエンジニアリングの中でも重要な技術の一つです。具体的には,粉体のサイズを調整するためにサイクロンなどの分離機に供給する際に必要になることが想定されます。今回,学生に取り組んでもらったテーマは,8号または9 号ケイ砂1kg を用意し,15分以内に固定容器A から固定容器B へケイ砂を“所定量”輸送し貯蔵することにしました。ただし,固定容器A に貯蔵してあるケイ砂の最上面と固定容器B 最下面の高さが50±2cm という制限を設けました。輸送装置の性能評価に関しては仕様からのずれを評価し,ずれの少ない物を高評価とするような関数を定義しました。

 12のグループが提案した輸送法は,スクリュー,ベルトコンベア,吊り上げ,サイクロン,定滑車を利用したものに分類されます。各グループの評価関数に対する捉え方と戦略により,装置開発の着眼点が様々であることが伺えました。固定観念にとらわれない自由な発想により設計したグループは今後の研究開発に大きな期待を抱かせてくれました。反面,他のグループの真似事で乗り切った印象を拭えないグループもあり,一抹の不安を感じます。既往の技術を踏襲することは初期のステップとして重要でありますが,そこから更に踏み込んだ創意工夫が欲しいところです。競技会で優勝したグループは吊り上げ式の粉体輸送装置を開発したグループであり,“所定量”を高精度に輸送する構造に特化した装置を巧に開発した所に勝因があったと思います。

 本講義を通じて学生には装置設計,構築する過程の中での試行錯誤と文献調査を行うことにより,試行の結果に対する分析と考察の重要性を肌で感じたものと思います。またグループで一つの目標に向かって取り組むチームワークを経験することで,エンジニアとして今後何が必要なのかを各個人が見出してくれるような指導が今後の課題であると思いました。

 本講義を実施するにあたり,同窓会生(健友会会員)の伊藤貢悦氏(三菱化学()),鈴村泰史氏(新日鉄住金ソリューションズ()),古田亮一氏(アイシン化工())には,ご多忙の中,招聘教員として学生へのご指導を賜り,また成果に対してご講評を頂くとともに,賞のご提供を頂きました。ここに深く謝意を表します。また松浪技術員に作業の安全性について毎回御指導頂き,本講義を無事故で終えることができました。優秀な成績を収めたグループの奨励のための褒賞にご援助頂きました健友会に厚く御礼申し上げます。

 

<事務局より>

動画をアップするとお送りしたニュースレターには書きましたがサイトの仕様でアップできませんでした。

ベルトコンベア

青いベルトにバケットがついていて下から砂をすくい上げている。

空気輸送

下から吹き上げられた砂が赤いコーンの上から入る。コーンががサイクロンとして働き砂を分離している。