学部2年生向け講義 「プロセス基礎セミナー」  運営委員長 松岡辰郎

プロセス基礎セミナーは,分子化学工学コースに配属された学部2年生が4-5人のグループを組み,化学工学的な課題に対してその解決法を自ら発案し,その実現に向け,装置を設計・開発し,学生の独創性,デザイン的思考,創成力を育成することを目的とした開講科目です。講義の最後には競技会を開催し,各グループで開発した装置の性能を競うとともに,プレゼンテーションを通じてその構想,研究成果を発表します。また,各業界にて第一線でご活躍されている3名の同窓生に招へい教員として審査の協力および講評をお願いしており,他の講義にはない特色ある内容になっています。

平成26年度は平成25年度と同一テーマ(分離装置を作ろう -比重,大きさ,形,材質等の異なる混合物からの分離-)で本セミナーを開講しました。「分離操作」は化学製品の製造プロセスや廃棄物処理など様々な分野で必要とされる代表的な単位操作の一つであり,それに関連した課題に学生に取り組んでもらいました。

プレ競技会では,PP楕円球4mm程度,スチロール球2~3mm,直方体セラミックス 約3mm×約3mm×約8mm3種類の分離対象物を各50個ずつ混合したものを装置に投入し3つの容器に分離することに取り組んでもらいました。評価は各容器に回収した分離対象物の個数と不純物の個数できまり,分離対象物の個数は1/個とし,不純物は1/個で減点になります。最大50×3150点となります。また,回収率も評価の対象とするために紛失した場合には1/個とし減点しました。50個をそれぞれすべて別々の容器に分離できた場合150点となります。

競技会では,プレ競技会での三種に加えて,ガラス球2mm,ガラス球4mmBB6mm,鉄球3mm,鉄球5mm,スチロール球10mm,金属製リング 径4mmの中から任意の種類を加えても可とします。今回,分離対象物体について,指定3種(PP楕円球,スチロール球,直方体セラミックス)以外,分離対象物体として選択するか否かは各グループに一任することとしましたが,分離対象物を増やすことで基準点(満点)が高くなります(1種増やすと満点50点加算,ミニマム3種なら満点150点,10種なら満点500点)。ただし,昨年よりも種類増やすことによるボーナスポイントを下げ,対象物をしぼり精度をあげて高得点ねらうという戦術が取りやすいようにしました。また,装置に対する恣意的な操作を避けるため,「最初は,分離装置とは異なる容器に分離対象物を全て入れる」,「ある種のトリガーをかける(電気的スイッチを入れる,栓をはずす,留め金をはずすなど)ことによって,分離対象物の分離装置への移動を開始する」,「トリガーをかけた後は,分離終了まで,分離装置(最初に分離対象物が入っていた容器を含む)に対する人の手による操作を行わない」という基準を明確化しました。

分離対象物体の性質の違いが主に比重,大きさ,形,磁性の有無ということもあり,今回学生が提案,実践した選別方法は,①篩選,②風選,③浮選,④磁選の4種類のいずれかを組み合わせたものでした。グループによっては目標値の9割をコンスタントに出すグループもあれば,評価点がマイナスになることころもあるなど各グループの差が出たと思います。競技会で優勝したグループは7種の分離対象物を選び350点の最高点に対して342点と98%の回収率をとり非常に優秀な成果を収めました

本講義を通じて学生には,装置やシステムを設計,構築する過程の中で,文献調査,基礎実験の積み重ね,結果の解析,PDCAサイクルを円滑にまわすことなどの重要性を実感して頂けたのではないかと思っております。

本講義の実施にあたり,同窓会生(健友会会員)の伊藤貢悦氏(三菱化学()),鈴村泰史氏(新日鉄住金ソリューションズ()),古田亮一氏(アイシン化工())には,大変お忙しい中,招へい教員として学生へのご指導を賜り,また,成果に対してご講評を頂くとともに,賞のご提供を頂きました。ここに深く謝意を表します。最後になりましたが,優秀な成績を収めたグループへの褒賞,および全学生へ記念品をご提供いただきました健友会には,厚く御礼申し上げます。